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定常と非定常

2016-11-23

定常と非定常
定常状態のリアルさ

汚染質が発生する空間の平衡濃度は汚染質発生量と換気量とで決まり,室容積には依存しません。例えば1時間あたり15リットルのCO2を排出する人間が15m3/hの換気をしている気積30m3の部屋に在室すると,室内CO2濃度は最終的に1400ppmになります(外気CO2濃度が400ppmの場合)。一方,容積5倍の空間(気積150m3)に同じ条件で人間が一人在室し,15m3/hの換気をしていても平衡濃度はやはり1400ppmになります。

このように説明すると、「なぜ?」と思う人と「なるほど!」と思う人がいます。実際,この現象は間違っていませんが,しかし感覚的には何か違う,と感じるはずです。

上の計算例を時間軸でグラフ化したものを下記に示します。濃度は最終的に同じになりますが,そこに至るまでの変化過程が決定的に違うのです。

CO2濃度一目瞭然ですね。30m3の空間の場合,約10時間でほぼ平衡濃度になるのに,150m3の空間では48時間経過後にやっと平衡状態になります。これが定常(平衡状態)と非定常(定常になるまでの変化過程)の違いになります。

カビが生えません

話は変わって,木材のカビの防除方法について研究を行っている学生がいます。カビが生えたあと,どのように処理すれば再発を防止できるか,という実験です。

この実験を行うには,まずはカビを生やさないといけないのですが,やってみるとなかなかうまい具合に生えません。なぜでしょうか。

カビの成長は材料の表面相対湿度(水分活性)に依存しますが,材料が乾燥したままだと,高湿な環境に木材を置いてもすぐに含水率は上昇しないからです。カビが生えるのは材料がカビ成長に適した平衡含水率になってからになります。

住宅のカビ問題とダイエット

このことはつまり,カビが生えやすい状態へ移行するには時間的猶予があるということです。これは非定常の世界です。平時に材料が乾燥した状態をキープできれば,多少,湿度が高くなっても含水率はすぐに上昇せず,カビは発生しません。逆に,日ごろ水分発生が多く,かつ換気量の少ない空間の材料は,高い湿度に平衡した状態になるので,少しの水分供給ですぐにカビが生えてしまいます。

カビの発生する住宅は潜在的にカビ体質です。小手先の改善ではなかなか解決しません。長期的な対応が必要です。これは人間も同じです。たまに暴飲暴食しても直ちに太りませんが,毎日コツコツ余計に食べるといつの間にか太ってしまい,痩せようと思ってもすぐには痩せません。普段の食生活が大事です。

定常の世界は明快でわかりやすく,また実用的にも価値がありますが,現実はもっと複雑です。正しい現象理解とその問題解決には,よりリアルに非定常で考える必要がありそうです。

本間義規 Honma,Yoshinori, Ph.D. in Engineering
宮城学院女子大学 生活科学部 生活文化デザイン学科

 

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2016-11-23

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